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空き家を壊して更地にすると税金が6倍になるんでしょ?
空き家の所有者からこのような質問を受ける機会が増えてきました。
空き家問題がテレビや新聞で頻繁に報道されるようになって、
この固定資産税制度の認知度は格段に上がったような気がします。
税金が6倍になる ⇒ 空き家が増えている原因
そのように報道されることもありますから、そう考えている人も多いのではないでしょうか?
しかし、実状はかなり違っています。
■6倍に増えるのではなく、6分の1になっている
実は住宅が建っている土地は、更地や他の用途の建物が建っている土地よりも
固定資産税の課税額が低くなっています。
200uまでの小規模住宅用地 |
⇒ |
課税標準額の6分の1 |
200uを超える部分 |
⇒ |
課税標準額の3分の1 |
課税標準とは税額計算の基礎となる金額のことで、課税する市町村が決定します。
(時価の70%を目安にしていますが、実際は・・・)
税率は1.4%です。
例えば299uの土地があったとします。
その土地の課税標準が700万円だったとすると、
固定資産税は98,000円となります。
しかし、その土地に住宅が建っている場合は軽減措置により、
固定資産税は20,741円となります。
計算式 |
299u=200u+99u
700万円×(200/299)×1/6×1.4%=10,925円
700万円×( 99/299)×1/3×1.4%=10,816円
10,925+10,816=21,741円 |
家が建っているだけでその間ずっと税金を78,000円も下げてくれるわけですから、
所有者にとっては大変ありがたい税法です。
ではなぜ税法がそのような大盤振る舞いになっているかというと、
高度経済成長期とバブル期において急激な地価上昇が起こったことに端を発しています。
地価の上昇に平行させて税金を上げるとなると大混乱が起きる。
(地価の上昇率と給与所得の上昇率には大きな開きがある。)
住宅以外の事業用地であれば固定資産税を損金に算入できるが、
サラリーマンにはそれができない為に負担が大きすぎる。
このような理由から住宅用地に関しては軽減措置を行なう必要があるとの判断だったようで、
その税法が地方においては地価が下がり続けている現在においても継続されているわけです。
時々この軽減措置を「住宅を建てさせて景気を良くする経済政策の為に始まった。」ように
書かれている文章を見かける時がありますが、実際にはそれは正しくないようです。
家が建っている期間は軽減措置という恩恵を受けていたわけですから、
家がなくなったら恩恵もなくなるのは当たり前。
「固定資産税が6倍になる」というのは、
実は 6分の1だった固定資産税が当たり前に戻る に過ぎないのです。
■固定資産税が6倍に増えることはない
先ほどの例では家を壊して更地にすると、
固定資産税が20,741円が98,000円に上がる計算になりました。
あれっ?6倍じゃなくて4.7倍にしかなっていない!
そう、それは土地面積が200uを超えているからです。
確かに土地面積のうちの200u分は6倍になっていますが、
200uを超える部分は3倍にしかなっていません。
テレビには時間の制約があり、新聞にはスペースの制約があります。
結果的にこの部分は「最大で6倍になる。」という表現をすることが多いのですが、
6倍という数字だけが独り歩きして多くの人たちに誤解を与えてしまっているような気がします。
地価の高い都心部では土地面積が200u以内なのは当たり前かもしれませんが、
地価の安い地方においては土地面積が200uを超えているなんて普通。
6倍にならない土地も数多く存在するんです。
それともう二つ。
見逃しがちなのが、家を壊すと家の固定資産税はゼロになるということ。
どんなに古くてもほとんどの建物には固定資産税が課税されていますから、
その分は当然ですが減額となります。
また、多くの地域で固定資産税と一緒に課税されている都市計画税も
200uまでの小規模住宅用地 |
⇒ |
課税標準額の3分の1 |
200uを超える部分 |
⇒ |
課税標準額の3分の2 |
という軽減措置があり、更地にしても3倍から1.5倍までにしか上がることはありません。
それらを考慮すると、
空き家を壊して更地にしても税金は絶対に6倍にはならない。
これが正しい回答となるわけです。
ちょっと説明が分かりにくいと思いますので、
次のページで具体例を挙げて説明させて頂きます。 |
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